Michiru
(更新)
弾丸トークするネイティブスピーカーと接したことがある方は、「早過ぎて聞き取れない!」と困った経験をされたことはありませんか?
話し手はいつものペースで話しているつもりでも、英語が外国語の聞き手側からすると、理解不能な「早口言葉」を連発しているようにしか聞こえない、なんてこともありますよね。
この意味不明のようにも思える「早口言葉」、実は英語のラーニングツールとしても使える優れもの。
本記事では、英語の実際の「早口言葉」を織り込みながら、そのメリットについて簡単にご説明させていただきます。
英語で「早口言葉」は、「Tongue Twister」 と言います。Tongue は「舌」。Twister は、日本のツイストドーナツのイメージのように「ねじれる」という意味があります。
Tongue Twistersは、Pronunciation Practice(発音練習) はもちろん、Accent Reduction(発音矯正) やFluency(流暢さ)の向上にも効果的なツールです。
英語の発音には、日本語にはない発音が多いですよね。例えば、日本人には難易度が高いとされる「L」と「R」、日本語にはない「Th」などは、意識的に発音しなければ、非常に出しがたい音です。
今回は、比較的難易度が高い発音のTongue Twistersをいくつか選んでみました。主に、「R」と「L」、「S」と「Sh」、「Th」の発音に集中してチャレンジしてみましょう!
先ずは、英語初級〜中級者向けにシンプル&ショートなTongue Twistersから見てみましょう。
初めは、ゆっくりと自分のペースで。慣れてきたら、徐々にスピードアップして言ってみましょう。発音記号をもとにしたワンポイントアドバイスも参考にしてみてくださいね。
「私が叫ぶ、あなたが叫ぶ、アイクリームが食べたいとみんなが叫ぶ」
発音記号:[aɪ skrim, ju skrim, wi ɔl skrim fɔr aɪs krim ]
この早口言葉は、[sk] という音が繰り返されています。試しに、日本語のカタカナ読みでもいいので「スク」だけで繰り返してみると、意外と難しいと感じるかもしれません。
[sk] はそれぞれ日本語の「サ行」と「カ行」ととても似ていますが、あまり口の形を大袈裟にせず、息を吐き出すイメージで発音します。
また、[sk] のすぐあとに来る [r] も日本人にとってはクセ者です。口のどこにも舌先をつけないように心がけましょう。
「赤い大型トラック、黄色い大型トラック」
発音記号:[rɛd ˈlɔri, ˈjɛloʊ ˈlɔri]
この早口言葉は日本人にとって苦手な「L」と「R」の発音が含まれているので、短いとはいえかなり難しく感じます。
まず [r] については、先述のように舌先を口のなかのどこにもつけないようにします。次に難しく感じるのは、実は red の [d] から lory の [l] に口の形を変える作業。
[d] は日本語の「ダ行」をベースに発音することができます。試しに「ダダダダダ」と言ってみましょう。舌の先が上の前歯の裏全体にくっつくことが感じられるはずです。
そこから [l] の発音に移るわけですが、[l] は上の前歯の根元に舌をつけて息を吐き出すと発音できます。前歯の「裏全体」から「裏の一部」を使うのだとイメージすると、発音しやすいですよ。
「フレッドがテッドにパンを食べさせ、テッドがフレッドにパンを食べさせた」
発音記号:[frɛd fɛd tɛd brɛd, ænd tɛd fɛd frɛd brɛd]
この早口言葉のポイントになるのは [f]、[b] と [t] です。
まず [f] について、カタカナ読みで「ファ・フィ・フ・フェ・フォ」を一度口に出して言ってみましょう。[f] の音に近く聞こえますが、口の上下がくっつかなかったはずです。しかし英語の [f] の発音は、上の前歯と下唇をつけ、息を吐き出すことでつくられます。
[b] の発音は日本語の「バ行」、[t] は「タ行(タ・ティ・トゥ・テ・ト)」と似ているため、そこまで難しくないのですが、[f] も [b] も [t] もまるっきり口の使い方が異なります。
それぞれの音の口の作り方を意識すると、早口でもしっかり発音できるでしょう。
「靴磨きのお店にスージーが座っているのを見た」
発音記号:[aɪ sɔ ˈsuzi ˈsɪtɪŋ ɪn ə ˈʃuˌʃaɪn ʃɑp]
すぐに「S」の多さが目に入るこちらの早口言葉は、[s] と [ʃ] の違いに気を付ける必要があります。
[s] は、日本語の「ス」、[ʃ] は「シュ」の口の形をつくって、喉を使わずに息を吐き出してみましょう。「スー、スー」、「シュッ、シュッ、シュッ」と腹式呼吸をする意識を持って繰り返してみると、イメージがつかめますよ。
「彼女はチーズを見る」
発音記号:[ʃi siz ʧiz]
こちらは [ʃ] と [s] に加えて、[ʧ] の発音を区別してしなければならない早口言葉です。
[ʧ] は日本語の「チ」と「チュ」の中間のような口の形で、喉を使わず息を吐き出します。3つの音のどれも、喉を使わないのがポイント。
「彼は3回フリースローを投射した」
発音記号:[hi θru θri fri θroʊz]
「L」や「R」と並び、日本人が苦手とする発音の代表格の1つである「Th」の発音。
その「Th」の音である [θ] は上下の前歯の間に舌を入れ、隙間から息を吐き出すイメージです。舌を火傷したり、歯医者さんに行って麻酔を打ったときにうまく「サ」と言えないときと似ているかもしれませんね。
[θ] のすぐあとに [r] が来るのにも注意しつつ、threw、three、throws の発音をしてみましょう。
「ところで、こちらが寿司シェフですか?」
発音記号:[soʊ, ðɪs ɪz ðə ˈsuʃi ʃɛf?]
こちらの早口言葉、一回試しに声に出してみましょう。最後の chef [ʃɛf] が、 [sɛf] のようになってしまいませんか?
sushi の部分で [ʃ] の音があるので、[ʃɛf] で [ʃ] の音を繰り返そうとすると、口の形を作るのに間に合わなくなってしまいます。カタカナで「シャ・シ・シュ・シェ・ショ」と言うのも難しいですよね。
sushi のあとに同じ音が来ることを意識して声に出してみるといいですよ。
「彼らは、今週木曜日を30日だと思っている」
発音記号:[ðeɪ θɪŋk ðæt ðɪs ˈθɜrzˌdeɪ ɪz ðə ˈθɜrtiəθ]
先ほど「Th は日本人にとって苦手な音」とお伝えしましたが、「Th」は必ずしも [θ] の音になるわけではありません。この早口言葉の発音記号を見てみると、「Th」が [ð] で表されているのがわかると思います。
これは「Thの有声音」と呼ばれ、口の作り方は基本的に [θ] と同じで舌を上下の歯で挟みますが、息ではなく声帯を使って音を出します。感覚としでは「ダ」の音に近いと言っていいでしょう。
早口言葉に「Th」がたくさん入っていると視覚的にも混乱してしまいそうですが、2つの音の出し方に分かれることを注意して声に出してみるといいですよ。
英語のTongue Twistersには、ロングヴァージョンもあります。次のチャレンジは、ネイティブスピーカーで知らない人を探す方が難しいTongue Twistersの定番です。
先ずは、声に出して読んでみて下さい(周りの目が気になる方は、黙読でOK)。
ここでは、Tongue Twistersの意味はあまり気にしなくても大丈夫です。一通り目を通した後は、ご自分のペースで進めてみて下さい。
Peter Piper picked a peck of pickled peppers
A peck of pickled peppers Peter Piper picked
If Peter Piper picked a peck of pickled peppers
Where’s the peck of pickled peppers Peter Piper picked?
ピーター・パイパーが 1ペックの酢漬け唐辛子をつまんだ
1ペックの酢漬け唐辛子をピーター・パイパーがつまんだ
ピーター・パイパーが1ペックの酢漬け唐辛子をつまんだなら
ピーター・パイパーがつまんだ1ペックの酢漬け唐辛子はどこにある?
(ペック→乾量単位)
How much wood would a woodchuck chuck if a woodchuck could chuck wood?
He would chuck, he would, as much as he could, and chuck as much wood
As a woodchuck would if a woodchuck could chuck wood
もし、ウッドチャックが木材を投げ捨てられたとしたら、ウッドチャックはどれくらいの木材を投げ捨てるだろう?
ウッドチャックは投げ捨てる、ウッドチャックは出来るだけ木材を投げ捨てるだろう
もし、ウッドチャックが木材を投げ捨てられるとしたら
Tongue Twisters を通じて、「苦手な発音」を素早くキャッチすることができます。つまり、特に力をいれるべき「発音」を見極めることができるのです。
韻をふんでいるTongue Twistersのように、同じような言葉が連発されると、脳が混乱してしまうのだそうです。その結果、脳がパニック状態に陥り、インフォメーションプロセスがスローダウンしてしまう。脳からの伝達が遅くなるため、発音するときに必要な筋肉の動きが鈍くなり、発音が難しくなる。
発音しがたい音が、「苦手な発音」と認識される、というふうにも考えられます。苦手意識を持つものを避けてしまうのは人間の心理ですよね。「苦手な発音」を避けずに向き合うことで、苦手意識を克服できる確率が上がり、発音上達につながります。
発音が上達するということは、ネイティブアクセントにより近づくことができるということです。練習を積み重ねることで、発音に必要な筋肉が柔軟になっていきます。
発音トレーニングは、ジムで身体の筋肉トレーニングするのと似ています。すぐに効果が現れなくても、あきらめずに続けていれば、徐々に感じ取ることができますよね。100%の理想を追い求めるよりも、現実的に「理想に近づく」ことは、大いに可能です。
発音をマスターしている人でも、Tongue Twistersは使えます。
例えば、プレゼンテーションやスピーチの前に、ウォーミングアップとして取り入れると、口の動きが滑らかになり、緊張も和らぐ、一石二鳥のメリットがあります。
職業柄、人前で話すことに馴れている俳優、講演者、政治家でも、本番前にTongue Twistersを口にする人が多いそうです。
また、脳を活性化させるため、脳トレのツールとしても役立ちます。
このようにマルチに使える英語の早口言葉Tongue Twisters、目的に応じて、ぜひご活用下さいね。
Practice makes perfect(練習すれば、マスターできる)、「継続は力なり」です!
きっと、三ヵ月後、半年後、一年後には、早口なネイティブスピーカーとの距離が縮まっていることでしょう!